磯部くん
磯部くんと言うのは別に彼の本名ではない。
高校生の時の彼氏の中学校の後輩のことだ。
彼とのことは、私の中で全然綺麗な思い出ではない。故に消化不良で気持ち悪い。
確か始まりは彼氏のことを相談したことからだったと思う。
これは別の話だけど、私は当時「忘れさせてあげる」という言葉がマイブームだった。
いつか母が「異性のことを、異性に相談したらその異性との関係は終わりだ」と言っていた。
確かにその通りであったが、私は終わらせたかったのかもしれない。
とにかく相談のはずが気づいたら「忘れさせてくれる?」と聞いていた。
そのあと磯部くんは忘れさせてあげるとも、あげないとも答えず、「にぼしさん綺麗だしなあ」と言った。
わたしは当時「綺麗」という言葉が地雷原だった。
でも何だかまあ、そんな言葉が言い訳になるならそれでいいのかとも思った。
私はいとも簡単に制服を脱いでしまうから人生がつまらないのかもしれないなと思っていた。でもまあすぐに脱ぐんですが。
いつも行っていた駒込駅の近くの、神社のある公園のベンチに座って、「後悔してる?」と聞かれた。
「そんなこと聞くなんて、後悔してるの?」なんて会話をしていた。
この公園に来るといつもそんな話をしていたように思う。
きっと彼も彼で、先輩の女を寝とったって、何となく優越感みたいなものを感じていたんじゃないだろうか。
何となくそんな日々が続いて、なんだか私は飽きてしまって、ここで彼を好きだとか言ったら、彼はどう答えるだろう?とふいに思いついた。ので言ってみた。
そうしたら彼は「俺が大学生になるまで待っててくれたら本当の愛だと信じてあげる」ってそう言った。
気持ち悪いなと思った。思い上がりすぎ。つけ上がりすぎ。付け上がらせたのは、私なのだろうけど。
なぜか電話越しに鼻歌を歌う彼。
趣味悪いなあ。
なので「私はそんなに一途じゃない、見返りのない愛はいらない」みたいなことを確か答えた。
「うんそれでいいよ、だってきっとにぼしさんは、これからいろんな男と出会って、いろんな男と俺としたみたいなこと、初めてみたいな顔してするんだ。で、初めての気持ちに戸惑ったりして、普通の恋愛をして、普通に生きていくんだもん。それでいいんだよ」
私はなにこいつ酔ってんだろ気持ち悪いなあと思った
あ、「うみべの女の子」じゃん!
だから磯部。